朝起きた時に。
突然自分の部屋の様子が、100パーセント変わってたら。
あなただったら、どうします?
それは、ある朝の事。
「なによこれーーーーーー!」
変わり果てた、自室の姿に。
とりあえず、私は絶叫した。
私の部屋は、シンプル且つ機能的がコンセプトなのよ!なのになのに!
眠ってるのはベッドじゃなくて布団だし。
テーブルはこたつになっちゃってるし、クッションは座布団になってるし。
ベッドサイドにおいてあった置物は、手鞠と折り鶴に化けてるし。
窓の外はなぜだか雪景色だし。
そうよ!お気に入りのカーテンのかかった窓は、障子張りに変わっちゃってる!
頭の中を検索して、私の部屋にあったものが、何に変わっちゃったのか、一気に理解する。
これ、どっかで見た映像に似てると思ったら。
こないだ、ニュース番組の特集で見た、昔の映像。
「マスター!!!!!」
天井に向かって、声を張り上げる。
この様子を、絶対に絶対におもしろがって見ているはずの、マスターを呼びつけた。
「やあ、ユウ。今日はよく眠ってたねぇ」
「よく眠ってた、じゃなーいっ!」
***
私に答えるマスターの姿は見えない。
それは、当然。
マスターと、私は存在する場所が違うから。
人類の科学は、そんなに急進歩することはなくて。
いわゆる、ヒトと変わらない姿を持ったロボットを完成させることを、人類はまだ達成できてない。
でも、いわゆる仮想現実として、プログラムに人格を持たせる技術は、ここ数年でずいぶんと進歩して。
スケジュール管理用のプログラムや、家庭内ネット管理のプログラムに、人間らしい対応を付加した製品が、最近の流行りだ。
そして、最新の研究で。
より個別のパーソナリティを追求したプログラムの開発がなされた。
その、第1号が、私、YOU……ということになる。
***
それにしても。
マスターは、私で遊んでるようにしか思えない時があるのよね。
この人、ホントに世界有数の技術者なのかしらって、思っちゃうもの。
「で、いつになったら直してくれるの?」
お昼を過ぎても、マスターは、私の部屋のことはそのまま。
今日の実験ノルマになってる試験をこなしていくだけ。
そのつもりにさえなれば、キー1つでデータが入れ替わるハズ、なんだけどなぁ。
データ、ちゃんととってあるのかなぁ。
壁にお気に入りのポスター、張ってあったんだけどなぁ。
「まだ、完成させてないのだから、元には戻せないさ」
データチェックを一通り終えたマスターは、モニターを見るときだけかけてるメガネをはずしながらそう言った。
「完成してないー?」
「そうとも」
自信たっぷりにマスターはうなずく。
「壁になにか、欲しいじゃないか。絵とかね。本当はユウが目覚めるまでに完成させるつもりだったんだけどねぇ。なんせ資料が少ないからね。……ああ、歌を書いて飾ろうか」
「歌〜?」
「そうさ。日本人はね、昔は四季折々の歌を詠んだものなんだよ」
桜が咲けば、桜の歌を。
雪が降れば、雪の歌を。
「だから、日本人は四季の移り変わりにとても敏感だったんだろうね」
そう言うと、テーブルの上の本を取ってぺらぺらとめくる。
「今は雪景色だから……、そうだな、この歌はどうだ?」
マスターが、キーを打つと、それが私の手元に現れた。
むばたまの夜のみ降れる白雪は
照る月影の積もるなりけり
「せっかくだから、飾っておこうじゃないか」
探し出した歌が気に入ったのか、マスターはデータをいじくるために、パソコンに向かってしまった。
こうなっちゃったら。とことんつきあうしか、ないんだよなー、うちのマスター。
今日はもうあきらめるしか、ないなー。
あとで一つだけ、気になっていたことを聞いてみた。
「マスター。どうして『和風』なの?」
「ユウも一緒に見ただろう?この間のニュース。あれを見て、懐かしいと思ったんだよ」
「国」という概念や、古い文化が、どんどん消えていっても。
「なんだかんだ言っても。私も日本人なんだねぇ」
この作品は「飄々亭」のごんたさんと、「ムゲン博物館」のカゲツさんとの共同企画で生まれました。
「7つのキーワードを入れて作品を作ろう」という試みだったのですが、なかなかおもしろいモノになったと思います。
このおもしろさは、三人の作品を全てみていただいてこそ、だと思いますので。みなさま是非ごんたさんの作品と、カゲツさんの作品もご覧になってくださいね。
>>ごんたさんの『APRIL COME SHE WILL...』
>>カゲツさんの『祖父の部屋』
ちなみに、7つのキーワード、とは
1)雪のある風景、2)ニュース、3)座布団、4)障子、5)メガネ、6)うた、7)折り鶴
でした。
私の作品については……結局1年ほど前から作っていたキャラクターにご登場願いました。
いろいろなところで、活躍させてあげよう♪と思いつつ「良いように使われてる」ナンバーワン、かもしれないこのユウ、ですが。
みなさまのお気に召せばと思います。
2015年9月20日 追記
カゲツさんのサイト「ムゲン博物館」サイト閉鎖に伴い、リンクを削除しました。