いつか。
いつか、アナタへ届くでしょう。
歌は祈りをのせて。どこまでだって、届くから。
歌うときには。
音を閉じこめないこと。
たとえそれが真冬の朝でも。
まだ日が昇りきらないうちに、鎧戸を開ける。冷たいなんてもんじゃない、凍えそうなほどの真冬の空気が、暗い室内に入ってくる。
「……リスティ、寒いんだけどぉ」
朝の、日課みたいなもので。窓を全開に開けるのだけど。冬になると同室のアストリアには、いつも文句を言われてる。
「こんなに澄んだ空気が入ってくるのに、もったいないでしょう?」
一言だけアストリアに言い返して。
外へ向かって。
ひとつ大きく息を吸って、私は歌う。
歌うのは恋の歌。
願いをこめて。
風に乗せて。
どこまでも届いて。
「リスティ・ユエ! また貴女ですか!」
突然の乱入者――乱入者なんて言ったらまた怒られてしまうのだけど、つまり監督者である高神官さまが、乱暴に部屋の扉を開けた。
「朝の鐘が鳴るよりも先に歌うのは禁止だと、先日も申したでしょう! まして、恋の歌を神殿内で歌うなんて、何を考えているの!!」
ああ、せっかく気持ちよく歌ってたのに。またお説教かぁ。
でも、歌うことはやめないわ。
いつか。
そう、いつか必ず届くって信じてる。
この歌は、祈り。この歌は願い。
未だ見ぬ貴方へ。
少しずつ、少しずつ、「彼女」を書き込んでいます。
しっかし、このシリーズはファンタジーだと言うのに、今回魔法も剣も何も出てこなかった……(苦笑)