I.メルウ
「会いたいときに会えない相手なんて、つらいだけじゃないの?」
――つらいと思ったことは、あるわよ
「いつもそばにいてくれる相手を選べば良いのに」
――でも、それじゃあきっと、私が「私に課せられた働き」をできないと思うの。
「私は、意外だったわ。ルウが、恋をするなんて」
――そう、「占術師に恋はタブー」って言うものね。
「そうね、それは意外。私だって、ルウに占ってもらうために自分の恋を話すことはあっても、ルウの話を聞くなんて無いと思ってた」
「私だって、そうよ。まさか自分が“話す側”になるなんて、思わなかったわ」
――恋は、不思議。
あなたには、なかなか会えないけれど。
でも今日も、恋をしている。
II.香月
「だって、あたしが何で怒ってるか、わかってないじゃないの!」
いつも いつも
こうやって怒ってばっかりなのよ
困らせてるわ わがままだわ
大好きなのに うまく言えないね
大好きって言いたいのに 言えないね
口を開けば憎まれ口
なのに、あなたはいつも笑って私を受け止めるから。
ときどきどうしようもないほど こわくなるの
――ねえ。大好きだから。嫌いになんてならないで。
III. 海
鳴らない電話。ストラップを指でつまんで、顔の前にぶらり。
……そろそろ、アイツも限界のハズ、なんだけど。これはきっといつもの意地っ張り。
「こっちからかけちゃえば?」
横から、月人が言ってくるけど。
「それじゃダメなの。向こうからかけてこそでしょーが」
そう、俺からかけるんじゃダメなんだよ、この場合。
早く、早くかけてこい。
それで俺を安心させろ。
――いじっぱりとあまのじゃくの恋は じれったくて
でも この恋は
最高にわくわくする恋
IV. 月人
子供の頃から。
恋は、できないのだろうと、思っていた。
祖母が俺たちに託したもの。
時を超えて、託されたもの。
礎となる存在を導く、という運命《さだめ》を課されたのが、俺。
世界の礎となる魂を継承した存在を導く。その為に。
祖母が俺に遺した、未来視《さきみ》の力。
これは、果たされるべきこと。
祖母が遺したものは、世界の命運を左右する運命。
その祖母もまた。
自らの願いを封じ込め、独り別世界へ降りたった人だった。
血によって導かれた宿命なのだから。
だから、恋は出来ないだろうと。
俺はそう覚悟していた。
今、この瞬間までは。
この宿命を果たす途中に。
俺にも、こんな出会いが待っているなんて――。
2004年11月〜2005年9月にかけての、拍手御礼SSでした。 拍手御礼としての公開中は、「誰の」話かはあえて伏せていたのですが。わかったヒトいるかなぁ。
メルウちゃんは、これが初出ですねア・ルース伝本編を知っている、数少ないヒトは覚えているかも……? あと、昔のエレメントの会誌で――会報じゃなく、会誌で――彼女のイラスト書いたような。
一応これは、ア・ルース伝なのですが……。
なんというか、まあ、SSもどき的。