月夜――かごの中の鳥。


 今日も、月が昇る。
 月が昇る頃、この場所は動き出す。
 日が沈み、再び昇るまでの間だけ、門が開かれ。


 あの人は、今日もいらっしゃらない。
 必ず戻ると言ったまま。もう幾日が過ぎたのか。
 大事なお役目なのだと、あの人はとても誇らしげに微笑って。
 戻ってきたら、私をここから出してくれると、そう言った。


 あの人は、まだ、もどらない。
 桜の花が咲く頃までに、必ず戻ってくるからと、そう言っていた、あの人は。
 花は咲き、散ってしまっても。まだ、戻らない。
 あの人はいずこに。

 今はいずこに。



 ――月は、どこにいても同じ月を見られるのだ。
 そう教えてくれたのは、あの人。
 外に出たことのない私に、いろいろなことを、教えてくれた。
 今日も、昇る月を眺めながら、あの人を待っている。


咲良(さくら)、お客だよ」
 呼ばれ、振り返り。もしかしたらと、はやる気持ちを抑え。部屋に向かっても。
 待っているのは、あの人ではない。
 

 そして今日も。
 偽りの微笑を浮かべ、楽を奏で……。


 私は、ここに囚われて。
 飛び立てないかごの鳥。

 格子の外には番人が。
 今日も目を光らせる。

かごめ かごめ
かごの中の鳥は……。

2002/01/28 LIBRALY 1へ

作った当時に使用していた素材を見つけた時に、思いついたお話です。

「かごめ歌」の裏解釈って知ってます?
「遊女はいつになったら、遊郭から出られるのか」ってやつ。
その辺を思い出しながら。


当時のコメントで「ええと……。なんか、反動というか。勢いというか。私らしくないような……ものができてしまった……気がしてます(苦笑)」と書いてあったけど、今思うとそうでもないなー(笑)。

一応、三部作(?)1つ目です(あとは『草の庵を……』と『月下の調べ花の朝』)

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